JTB最後の仕事の舞台は中国でした。国も人も一筋縄ではいかない相手なので、言葉の勉強を始め、中国に関する本も読み漁りました。
 折しも尖閣問題、反日デモと続き、ビジネスはなかなか思うように進みませんでしたが、中国の長い歴史と、広大な大地に徐々に関心を深めていきました。
 退職後も1人で中国各地を歩き回りましたが、若い頃読んだ井上靖の「敦煌」の舞台である西夏とその時代に興味を覚え、西夏の宮廷に生きた1人の女性の姿を追って「羅皇后」という小説を書きました。友人に配ったところ、「面白い、もっと書いてみろ」という反響があり、気を良くして再び執筆したのが「青き塩」です。塩の流通を巡って西夏と宋が激しく争う中、その狭間で動く塩商人の物語です。今年10月に出版され、書店に並びました。
 中国をいろいろ調べたご縁で、地元我孫子市でも中国各地の博物館を題材にした講演を行っています。コロナ禍で国と国との交流を閉ざす日々が続いていますが、先が見えてきたら、再び中国の大地を歩きたいと思います。