3-4-2%e8%b0%b7%e5%b4%8e%e3%81%95%e3%82%93今年の4月、三洋座座長の谷崎洋一郎さんは、お客様の反応に達成感を味わうと共に、劇団員の気持ちが一つになったと感じ、旗揚げ公演の舞台で嬉しさをかみしめていた。

谷崎さんが俳優を目指したのは8年前の58歳の時。“これまでの経験を生かしてみませんか”ふと目に留まったこの広告に心が打たれた。1973(昭和48)年、㈱総合開発に入社。45歳で自立転身した後、奥様の実家の料理店を手始めに、多くの職を経験した。神輿に乗せられては自ら降りた。広告を見たのは、新たな職と生きがいを探しているまさにその時だった。

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劇団を立ち上げたのは昨年5月。主力メンバー3名の名に“洋”の字があることから劇団名は三洋座。今年の1月から毎週末、練習を重ねた。

3-4-4%e6%88%90%e5%8a%9f%e8%a3%8f%e3%81%ab%e7%b5%82%e4%ba%86キャリアに違いがあり、役の出来が心配だった。しかし、開演とともに杞憂と気が付いた。一番キャリアの少ない俳優が最もイキイキとしているのだ。「それぞれ違う価値観を持っている劇団員だが、裏方を含め同じ目的に向かわせるのが大事。」波乱万丈の人生の中で得た教訓だ。「お客様の息遣いまで分かる舞台の緊張感と、終わった後の達成感はたまりません」。来年2月の公演に向け、また歩き始める。