転機は退職後にやってきました。暇を持て余していたので、何か時間を有意義に使えることはないかと考え、早稲田大学の社会人教養講座で、昔の仕事とつながりのあるフランス語を受講することにしたのです。

 週1回90分の履修も⒑年余りが過ぎました。15名程のこぢんまりしたクラスで、講師は変わることなく、受講者も毎年ほぼ固定化されています。プロのシャンソン歌手、オーストリアに留学していたコンサートピアニスト、かつて鉄橋技術先進国のフランスに派遣されていた工学博士や昔のフルブライト留学生、さらには元大学教授(米文学)など、才能ある多彩な仲間に刺激を受け、切磋琢磨の充実した講座です。お陰で、時にはライブハウスでシャンソンを、コンサートホールで室内楽を楽しむ機会を得られるようになり、現役時代には接することの少なかった分野の方々とのお付き合いは得難い経験になりました。

 かつてパリ、ジュネーブに7年駐在したにもかかわらず、学生時代の不勉強がたたり、現地の新聞も読めなかった私が、今は昔翻訳で読んだ小説などを電子辞書を傍らに楽しめるようになりました。最近は、2014年のノーベル文学賞受賞者のモデイアーノの作品にはまっており、時間を持て余すことも少なくなりました。

現在クラスの最年長は90歳の工学博士、お陰でまだまだ先は長いと思える昨今です。


現役時代の仲間との高知旅行で