関東支部湘南から 高橋 洋さんの記事 ヴィンテージ・イヤー が掲載されました

1963年、入社後の初仕事は翌年に迫った東京オリンピック大会の「観戦予約整理券」販売だった。会場は南千住にあった大毎オリオンズ(千葉ロッテ・マリーンズの前身球団)のホームグラウンド「東京スタジアム」。現場では、山谷界隈のドヤ街の住人を動員してチケットの買い占めを目論む暴力団が傍若無人の大暴れ。一般市民から抗議されても球場職員や警護の警察官だけでは手に負えず、我々窓口の販売スタッフも身の危険を覚える程の大混乱だった。正直、「エライところに就職したもんだ!」と先行きを案じたことを覚えている。それでも、本番開催中はオフィシャル・スタッフとして大会運営に携わる社員もいて、そのユニフォーム姿を羨ましく見ていたものだった。
 時代はまさに高度経済成長の真っ盛り。70年の大阪万博でそのピークを迎える。長いJTB生活の中でも、ボーナスが年に4回支給された幸運はこの年だけだったろうか? そんな勢いに溢れた時代の記憶を『断想:音風景の昭和』(文芸社刊)として昨年末に上梓。洋楽の懐メロをテーマに旅や映画にからめた独りよがりの昭和史覚書だが、幸い同世代の方々からは共感をいただいている。