会員だより:続・街道歩きに魅せられて(さきたま 和田 重幸)

 深田久弥の言う〝日本百名山〟の完登を目指していた2003年頃、あと10座を残して山行から街道歩きに転じた。それ以来20有余年、街道歩きを続けている。
 最初は甲州街道の一部を歩いた。往時の面影を残した山路の宿駅を訪ね歩くことは、それまでの登山活動とはまた違った誠に充実した新たな旅であった。その後は「江戸五街道」の東海道・中山道・日光街道・奥州街道・甲州街道を歩き、関連した善光寺街道東西往還・京街道・日光御成道・水戸街道・大山街道(青山道)等を単独で訪ね歩いた。
 2016年、東京23倶楽部の野萩氏から、「中山道を歩く」の企画があり、ガイドを一緒にとの話をいただき、1年半程楽しく担当させてもらった。引き続き2018年春から「東海道を歩く」を担当させてもらい、1年半全12回、参加の皆様(延べ608名)と一緒に歩いた日々は至福の時であった。
 ここ数年は古道の「鎌倉街道」を歩いている。承久の乱で「いざ鎌倉」と各地から武士が馳せ参じた鎌倉街道は時代と共に姿を消しているが、それでも保存されている古道や往時の雰囲気を残す地域があったり、地名として残っていたりする。さらに古戦場・城跡・寺社も多く、興味は尽きない。
 近年は書籍も復刻本・古地図・地形図等刊行され、私も1970年代の芳賀善次郎著「旧鎌倉街道探索の旅」( 上道(かみつみち)・中道(なかつみち)・下道(し もつみち)山ノ道(やまのち)の全4編)の復刻版を手に全て歩いた。中でも群馬県新田の(いくし な)神社で旗揚げし鎌倉に攻め入った新田義貞の進撃ルートでもある上道は印象深かった。また冬期に歩いた、群馬県藤岡から秩父・名栗・奥多摩・五日市・高尾・相
原へ抜ける山間部や多くの峠越えも忘れがたい山ノ道であった。
 これから先も、健康であれば街道・古道歩きを続けようと思う。
私にとって街道歩きは道楽の一つ、つまり道を楽しむことに他ならないと常々思っている。