70歳で完全退職して7年になる。当初は、仕事と無縁になったらボケるのではとか、有り余る時間をどうしようかとか、心配もした。しかし、案ずるよりは何とやらで、今のところ何とかボケずに忙しくしている。言うまでもなく最も大切なのは健康管理である。これを疎(おろそ)かにしてしまっては元も子もない。元気でやれるうちが花である。
 ところで、忙しいのはどうやら気の多さ、正しくは貧乏性のせいで、あれこれの趣味に手を出しているからのようだ。ただどれも放り出さずに、長続きしているのは我ながら感心だ。この年になってようやく「継続は力なり」という箴言(しんげん)の深い真理を痛感している。
  そんな趣味のうちでも、40年近く続いているのが書道だ。団旅有楽町の課長時代、主要な取引先から「書道教室を開かせてほしい」という要望があり、営業上の配慮・忖度から、終業後に会議室で開いたのが始まり。メンバーが変わり、支店が変わり、営本や本社に移り、気がついたら、教室を管理する立場の小生が深くのめり込んでいた。
海外勤務になっても通信教育で続けた。メンバーも増え、海外勤務の仲間も広がった。師匠は小生のいたニューヨークはもとより、グアム、シドニー、ニュージーランドと、各地の弟子達を訪問した。
熱心な師匠とその弟子達の取り組みの成果があって、師匠の目標にしていた「師範取得10人」がいつしか実現していた。有数の書道誌『書聖』の師範がOBOGで10人を超えたのである。
 現在の書道同好会の母体がこの「笑鄰会(しょうりんかい)」である。団旅有楽町の当時の同僚・平山正径(号・十方(じっぽう))氏が上級クラスを、小生(号・青松)が入門クラスを担当している。十方氏は今や権威ある読売書法展の幹事である。
 書道の良さは、まず1人ででき、さして金もかからないことだ。せわしないご時世、墨の香に心落ち着かせ、机に向かう。どんな趣味でもそうだが、上達の手応えが欲しい。その点、教科書が競書誌なので、毎月課題を提出する。翌月、段毎に成績順が発表される。つらくもあり、どきどきもする貴重な体験だ。
 趣味に「遅すぎる」はない。早速同好会で始めてみませんか?

明窓に浄机と墨と風薫る 彰