東北支部 蕎麦同好会9月例会 尾花沢市「名代そば処福原屋」の報告です 投稿日:2019.9.14
9月9日(月)尾花沢市「名代そば処福原屋」を訪ねる
9月例会は、尾花沢市芭蕉清風歴史資料館隣にある「名代そば処福原屋」を訪ねて、“最上早生原種”の蕎麦を堪能して来ました。
数日前から、台風15号の影響が心配され、当初予定していた仙台から山寺までのJR仙山線利用を諦めて、仙台から車3台を確保して直接尾花沢に直行する事にしました。しかし当日になって台風の影響は、福島でも仙台でも東北本線の在来線で一部列車が運休する等の影響がでて、福島では清野さんが、仙台では齊藤修さんが集合場所に行けない事態が発生しました。台風15号は昨日関東地方に上陸して大変な被害をもたらして、朝方太平洋に抜けるとの予報でしたが、東北南部には未だ強い雨を伴う暴風の影響が残っているようでした。
それでも仙台の3台の車は、それぞれの地域から10名の会員を乗せて、作並温泉の観光交流館ラサンタに集合しました。休憩後は、国道48号線を東根に、そこからは村山を経由して尾花沢市の中心街にある「芭蕉清風歴史資料館」に到着しました。そこで福島からの2名、山形からの3名と合流し、今回の参加者15名が全員揃いました。尾花沢は仙台の雨模様とは打って変わって青空が覗く天候で、台風の影響など全く関係ありません。
早速、「芭蕉清風歴史資料館」に入り、お待ち頂いていた芭蕉研究の第一人者「梅津保一先生」にご挨拶をして、お話しを伺う事にしました。実は、梅津先生は私が東北観光推進機構に勤務していた時に、「おくのほそ道研究会」の座長をお願いした方で、地元高校の校長をされて退職後は尾花沢市の歴史専門員としてご活躍をされていました。今回は、館内の説明と合わせて「芭蕉」と「おくのほそ道」についてのお話しを頂きました。
先生のお話しは、三つの蕎麦街道の顧問をされている事もあって、尾花沢で栽培している「原種最上早生」の話しから始まって、芭蕉も蕎麦を食べたし、伊賀上野出身の芭蕉はそば打ちも出来たとの独自の解説も披露いただきました。そして、芭蕉が10泊もこの地尾花沢に滞在したのは、紅花商人鈴木清風の“もてなし”のお陰と言います。また、芭蕉も世話になる紅花商人清風に対する心遣いとして、紅花が一輪だけ咲く“半夏生”の日に合わせて道を急ぎ間に合わせたと言います。一方おもてなしの達人清風も、自宅で3泊歓迎し、その後は近くの養泉寺を宿泊場所として提供しました。芭蕉は気兼ねの無いこの場所で連日のように訪ねてくる俳句仲間と、まるで自宅にいるようにゆっくりと旅の疲れを癒します。その時に詠んだ句が『涼しさをわが宿にしてねまるなり』で、気兼ねなく過ごした様子が伝わってくる句です。芭蕉も、清風の事を「おくのほそ道」文中で『清風と言うもの尋ぬ。かれは富める者なれども、志卑しからず。』と清風の人品を絶賛します。お話の最後には、芭蕉がこの尾花沢の地を書いた文章を、先生と一緒に大声で音読しました(まるで小学校の生徒のように)。
次に、資料館を後にして近くの養泉寺に向かいます。梅津先生は、ここの一番のもてなしは風景だと言います。裏手に案内して貰うと、そこからの景色は、一面に広がる田園風景(芭蕉が来た時は青田)の向こう正面に月山が(写真)、右手には鳥海山が奇麗に望めます。芭蕉がこれから旅する月山(出羽三山)・鳥海山(象潟)を毎日眺められる景色を提供したのも、清風流のおもてなしだと言う事です。
その後、例会会場である「名代そば処福原屋」に移動しました。勿論そば街道の顧問である梅津先生もご一緒です。今回も人数が多いので、6人用の個室と、テーブル席3席を準備いただきました。既に到着時間を伝えてありますから、天ぷらは準備していただいています。それに、山形地区の佐藤利喜弥理事から地酒「出羽桜」の差し入れが入り、おのおの注文したビール等でお蕎麦を待ちます。そば粉は、尾花沢地区だけで栽培されている「原種最上早生(わせ)」で、福原屋さんでは当日に使う分だけ石臼引きしています。ざるに入った蕎麦が運ばれてきました。やや白めの上品な色で、田舎そばにしてはやや細目に仕上げてある二八そばです。皆さん満足して完食いただいたようです。流石に、創業大正14年と言う90年以上の伝統ある蕎麦屋さんでした。
食事の後は、徳良湖近くにあるソバ畑を見学しました。丘陵地帯にあるソバ畑は北海道の田園風景を連想させる広大な土地で、一面のソバ畑に圧倒させられました。ここも梅津先生が顧問をされているという事で案内して頂きました。ここは、蕎麦屋と栽培農家と消費者で立ち上げた「ゆう遊三昧会」が街おこしで始めた畑で、10ヘクタールの広さだと言います。このソバが収穫される「新そば」の季節に又訪れてみたいと思いながら眺めて来ました。
今回は、ソバ畑を見学後に解散としましたが、台風から慌ただしく逃れるようにして尾花沢まで来た蕎麦の旅も、梅津先生のご案内で芭蕉の時代にタイムスリップしたかのような味わい深い旅となりました。梅津先生に感謝をしながら、尾花沢スイカをお土産に買って仙台・福島への帰路に着きました。(畠山記)
<参加者・敬称略>: 15名
石黒秀雄、若生勝芳、渡辺武郎、佐藤茂雄、佐藤 充、鈴木正利、須田幹雄、前田健二、千葉幸洋、河越和夫、鹿野美枝子、佐藤利喜弥、佐藤敏彦、大山 静、畠山 廣
梅津先生(中央)を囲んで記念撮影(尾花沢ソバ畑にて)
<次回例会案内> 次回は、11月11日(月)福島県会津の大内宿で名物「ねぎそば」を賞味する予定です。詳細は、9月下旬にお知らせします。次回例会にも是非ご参加下さい。
【BOB蕎麦愛好会】事務局 畠山 廣
℡022-379-0210 携帯080-5578-5920